- amhは卵巣の中に残る卵子予備軍のおおよその量を知ることができます
- クロミッドはamhが低いときに使うもの?
- amhが低いと体外受精で妊娠しづらくなるの?決してそうとは限りません
- amhが低いと高刺激は無意味?!低くても採卵できるの?
- 低amhではどんな排卵誘発方法がいいの?個人によっても異なります
- amhが低くてもショート法が採用されることも!
amhは卵巣の中に残る卵子予備軍のおおよその量を知ることができます
不妊治療の世界では「amh」というホルモンの単位で治療方針を決めます。
amhという名前だけは知ってるけど何なのかよく分からない方も多いのではないでしょうか。
amhは「おおまかに卵巣の中に残る卵子予備軍がどれだけあるか」を計ることができるホルモンです。
amhの値が高ければ高いほど卵子の在庫が残っていると考えます。
amhは「抗ミュラー管ホルモン」(アンチミュラー管ホルモン)の略ですが、なぜこれを調べると卵子の在庫が分かるのでしょうか。
卵巣の中には卵子の元になる細胞、原始卵胞が眠っています。原始卵胞は胎児のうちに一生ぶんの在庫が揃い、これを閉経するまで育て排出し続けます。
低温期になるとエストロゲンが働き原始卵胞のうち15~20個ほどが目覚め成長を始めます。これから6ヶ月かけてゆっくりと成長し、最終的にはたった1つの卵子だけが成長できます。
amhは卵子の成長で生まれるホルモン
原始卵胞、一次卵胞、二次卵胞、前胞状卵胞、胞状卵胞、成熟卵胞の6つのステージを乗り越えたスーパーエリート卵子だけが成長し排卵されます。
amhは原始卵胞から前胞状卵胞になるまでに放出されるホルモンです。amhが高ければ成長する卵子予備軍が多い=多くの予備軍が卵巣に眠っていると考えることができます。
逆に少ないと成長する卵子予備軍の数が少ないことが仮定されます。
amhは個人差が激しく年齢と一致しないことがよくあります。原因はまだはっきり分かっていませんが初潮が早い、カフェインを過剰に摂取し続ける女性は少ない傾向があります。
amhはビタミンDと関係があるらしいことも分かっています。夏より冬のほうが15%ほど数値が落ちることがあります。
不確定要素が多いホルモンなので病院ではamhを「治療方針を決めるための目安」にしか使いません。
amhが低いから排卵できない、妊娠出来ないわけではないことは覚えておきましょう。amhが0.1未満でも妊娠出産した女性はたくさんいます。
クロミッドはamhが低いときに使うもの?
では排卵誘発材のクロミッドはamhが高いときに使うのでしょうか。それとも低いときに使うのでしょうか。
答えは「amhが高くても低くても初めて使う排卵誘発剤に採用されることが多い」です。
クロミッドの副作用を極力避ける方針の病院もあるので一概には言えませんが、多くの病院では今でもクロミッドを第一の排卵誘発剤に採用します。
もし体外受精を希望するならamhが低い方はクロミッドで穏やかに刺激する方法が良いかもしれません。
体外受精は出来る限りたくさんの卵子を育てるのが一般的です。卵子を育てたくても卵巣に在庫がなければ多く育てることができません。
そのためamhが低い=卵子の在庫が少ない場合はクロミッドだけで卵子を育てることがあります。
これをマイルド法と呼び、採卵できる卵子の数は数個ほどですが体の負担が少なく連続して採卵できる利点があります。
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amhが低いと体外受精で妊娠しづらくなるの?決してそうとは限りません
amhが低いからといって体外受精で妊娠しづらくなるわけではありません。妊娠しやすさは年齢ごとに異なります。
30歳で低いamhの方のほうが40歳で高いamhの方より体外受精は成功しやすい傾向があります。
妊娠出産には「たった一つの元気な受精卵」があれば成立します。大事なのはこの点で在庫が多い少ないというのは二の次の話です。
厳しい話になりますが多くの産婦人科の医師は年齢=妊娠しやすさと断言します。
平均28歳をピークに女性の妊娠力は低下します。これは「生まれる前から一生分の卵を抱えて産まれる」宿命です。
この宿命に比べればamhの数値は誤差のようなもので、amh値の数値のみにとらわれすぎないようにしましょう。
ただ極度にamhが低いと自然妊娠は難しくなると言われます。その場合は医師からできるだけ早めに体外受精など高度不妊治療を行うほうが良いと治療を提案されるので考慮したほうが良いでしょう。
amhが低いと高刺激は無意味?!低くても採卵できるの?
amhは治療方針を決める指針になります。amhが高くて年齢も若いなら治療できる期間は長いと考え、マイペースに治療を進めても問題ないでしょう。
逆にamhが低いと時間の猶予は少ないと考え、早めに体外受精などの高度治療に踏み込んだほうが良いと考えます。
一般的にamhが低い場合は卵巣に高刺激の治療をしても多くの卵胞が採取できないと言われています。(月経3日目くらいに内診で卵胞の数を確認して最終判断をします)もとの在庫が少ないのに体への負担が強い治療を行っても大きな違いはないからです。
amhが低い場合は体への負担が少ない低刺激のほうが良いと言われます。
低刺激なら少ない在庫にまんべんなく成長を促し確実に育てることができます。体への負担が軽く金銭的にも比較的安価なのも良いところです。
amhが1以下でも採卵できる可能性のほうがずっと高いのです。あまりamhは気にせずに治療に臨みましょう。
低amhではどんな排卵誘発方法がいいの?個人によっても異なります
低amhの方の排卵誘発方法は何種類かあります。
マイルド法もありますが体調や卵胞の数次第では一般的な排卵誘発法を採用することもあります。
低amhでも卵胞の数が多いことはよくあるので、その場合は一般的な排卵誘発法が採用されます。
月経前から治療が始まるロング法、毎日卵巣の確認をして薬を微調整するアンタゴニスト法が主な方法です。
アンタゴニスト法は卵胞チェックのために連日通院しないといけないので遠方の方にとっては負担になりますが、常に体調を診ながら的確に投薬を調整することができます。
ロング法は投薬する期間が長くショート法に比べて薬代が高くなります。
これらの方法は体への負担は強いですが多くの卵胞を育て、たくさん採卵することができます。
できるだけ若いうちに多くの卵子を採卵したいときは一般的方法に賭けるのも一つの手段です。
これらの方法で採卵した場合は育った卵はすべて凍結して体を休めます。育った受精卵は体調(と子宮)が回復した時点で移植します。
amhが低くてもショート法が採用されることも!
amhが低くてもショート法を行うことがあります。ホルモンバランスなど体質的にロング法が採用しにくい場合などにはショート法で挑むこともあります。ほかの方法でうまく採卵できない場合もショート法が試されることがあります。
低amhでも卵巣の中の卵胞が多ければショート法でも多く採卵できる可能性があります。この場合はamhが標準な人とほぼ同じ数の採卵数になることもあります。
卵胞を育てても空砲(中身の卵子がない卵胞)の場合もあるので卵胞が多くても安心ではありませんが、採卵数に大差ないことも十分にありえます。
低amhでもショート法で妊娠出産できるケースはたくさんあります。
amhはあくまで治療方針を決める一つの指針に過ぎません。妊娠のしやすさ、しにくさに直接関係しないことも多いので過剰に振り回されないようにしましょう。
Amhは医師も治療の方針を決める以外で使うことは滅多にない値です。