- 人工授精(AIH)って何?なぜクロミッドも使うことがあるの?
- クロミッドを服用する人工授精(AIH)のスケジュールは?
- クロミッドを使った人工授精の成功率は?人工授精は副作用があるの?
- クロミッドは双子の確率が約5倍!喜びは倍だけど負担は10倍?!
- クロミッドを使わずに人工授精をすることもあります
人工授精(AIH)って何?なぜクロミッドも使うことがあるの?
人工授精(AIH)とは18世紀からある不妊治療の一種です。
男性の精液を針のないチューブを付けた注射器を使って女性の子宮に直接入れる簡単な手術です。日本では1949年に成功しました。
現在は精液を洗浄して円心分離器にかけ元気のいいものを選んで注入するので感染症の心配はほとんどありません。
多くの産婦人科で行われる「一般不妊治療」の最終段階の治療です。これ以上に高度な治療は「高度不妊治療(ART)」と呼び、卵子をいちど外の世界に出さないといけません。非常に高い技術と高額な治療費が必要です。
人工授精と体外受精は漢字が違うことにお気づきでしょうか。
「授精」は人工的に精子を注入する、「受精」は精子が自分の意志で卵子と結ばれるという意味です。
体外受精よりさらに高度な治療に顕微授精があります。泳ぐことができない凍結精子を卵子に注射して精子を注入する手術ですが、この場合は人工的に精子を注入するので「授精」になります。
人工受精(AIH)をする時はただタイミングを合わせて精液を注入するだけの治療もありますが、クロミッドなど排卵誘発剤を使うことも珍しくありません。
人工受精は妊娠率が低く(病院によって異なりますが、約5~10%ほど)クロミッドで二つ以上排卵しても育つ卵子は多くないという考えです。
クロミッドは卵胞をしっかり育て、より確実な排卵を促します。
さらに卵を放出した後の卵胞のカラから黄体ホルモンがたっぷり分泌され、高温期を支えます。
クロミッドの副作用で子宮内膜が薄くなるので病院によってはhCG注射やレトロゾールなど別の方法で排卵を促すことがありますが、クロミッドを使う病院もあります。
人工受精ができるケース、難しいケース
人工受精が有効なケースは
・射精障害
・子宮や子宮頸管(膣と子宮をつなぐ細い管)の変形でうまく精子が上れない
・おりもの不足で精子が子宮頸管が上れない
・精子の数が少なかったり動きが良くない (ただし精子の数が7000万以下の場合や一定以下の運動率などは人工受精でも妊娠は難しいと言われています)
・タイミング療法を6回以上でも妊娠しない
などがあります。
逆に人工受精でも妊娠が難しいケースがあります。
・女性側が高齢
・精子や子宮頸管に問題がない
・卵管が詰まって卵子が子宮まで移動できない
・女性側の免疫異常で精子を敵と誤認して攻撃する
などの場合は体外受精など高度な治療が必要になることがあります。
たとえ免疫異常でも自分の遺伝子が入った受精卵は攻撃しないので体外受精なら問題なく妊娠出産できます。
クロミッドを服用する人工授精(AIH)のスケジュールは?
クロミッドを服用した人工受精の流れは以下のとおりです。病院によって若干異なるので参考程度にご覧下さい。
・月経3日目ごろに内診で卵胞を確認。卵胞が複数確認できればクロミッドの服用開始。
・クロミッドの服用が終わる月経10~12日ごろに再び内診を受け。卵胞が育っていることを確認。もし生育が不十分なら追加でクロミッドを処方されることも。子宮内膜の厚さも計ります。
・排卵が近づく時期に内診し卵胞がじゅうぶんに育っていることを確認。病院によっては点鼻薬やhCG注射などで排卵をコントロールすることも。 夫が人工受精の日に来院できない場合は専用容器を渡されます。
・排卵予定日に人工受精を行う
・排卵後に内診で卵胞が卵巣にないことを確認。もし残っていたら排卵を待つかその周期はリセットする。
・症状によっては排卵後に黄体ホルモン剤の服用やhCG注射を注入することも。
・月経28日目以降に妊娠判定
意外と診察が多いことに気づかれると思います。
人工受精はすぐに終わる簡単なものですが下準備にはそれなりの手間がかかります。
人工受精を行う日のスケジュール
では人工受精を行う当日のスケジュールはどうなるのでしょうか。
夫が病院に同行できるか否かで若干変わります。
詳細は病院によって異なりますが、ここではある有名病院の例をご紹介します。
もし夫が来院できるなら特別な個室に案内され、専用の容器に精液を採取します。
来院できない場合は当日の人工受精の準備を行う2時間前ごろに自宅で採取します。
精液は放出されてもしばらくは運動率が低下しないと言われています。準備を行う2時間前までなら全く問題ないとされています。
病院に着いたら受付で専用容器を渡します。
受付はすぐに処置室に容器を渡し、洗浄し円心分離器にかけられます。
円心分離器にかけると生命力のある元気の良い精子が集まります。これだけを採取して処置は完了です。(完了まで60分ほど)
準備が整うと内診室に案内され、人工受精を行います。こちらの準備と心構えは内診と変わりません。数分ほどで人工受精が終わり、その日は終了です。
処置後はすぐに動いても妊娠率に影響はありません。病院によっては数十分ほど横になって休憩することもあります。
すぐ動くと妊娠率が下がるのではと不安な場合はベッドを用意してくれるので、必ず事前に申請しましょう。
急に依頼してもベッドが埋まっていることがあります。
念のため人工受精をした当日は抗生剤を服用し、子宮が感染しないようにします。当日の風呂はシャワーのみOKです。
クロミッドを使った人工受精の妊娠率は?何日目に人工受精するの?
人工受精の妊娠率はおおよそ5~10%ほど。平均8%ほどで決して高い数字ではありません。
タイミング法なら最大20%くらいの妊娠率なのに何故こんなに低いかは理由があります。
タイミングが分からないだけで条件が合えば妊娠できる女性が一定数いるからです。
人工受精まで治療が進んだ方は何らかの理由で不妊の原因があるため8%という結果になると考えられます。
人工受精を数回繰り返しても妊娠しない場合は体外受精も検討する時期かもしれません。
クロミッドを服用しても卵胞が育つペースは個人差があるので何日目に人工受精ができるかは分かりません。
理論上は月経14日目に人工授精を行えますが、卵胞の育ち具合を見て判断します。
クロミッドを使った人工授精の成功率は?人工授精は副作用があるの?
人工受精の成功率は決して高くはありません。
残念な結果になることのほうがずっと多い治療法です。陰性でもガッカリせずに次の治療に向けて体作りを心がけましょう。
人工受精による副作用はほとんどありません。
あるとすれば子宮頸管をチューブに通すときに傷つけることと、精子に含まれるプロスタグランジンという成分で腹痛や吐き気が起こる可能性があるくらいです。
子宮頸管を通すチューブ(カテーテル)は医療用の柔らかい樹脂で出来ています。
傷つけるリスクを最小限に抑えるように作られていますが頸管が曲がっている場合は傷つく場合もあります。
当日はおりものが赤やピンク色に染まりますがすぐに治まります。
プロスタグランジンは生理痛を引き起こす物質ですが精子にも含まれています。
洗浄と円心分離器にかけてプロスタグランジンの量も可能な限り減らしていますが完全ではないので軽い腹痛があるかもしれません。
感染症予防のために抗生剤は必ず飲み、(このおなかの痛みは生理痛と同じ)と思って足首を温めて様子を見ましょう。
クロミッドは双子の確率が約5倍!喜びは倍だけど負担は10倍?!
クロミッドを使った人工受精(AIH)の場合、双子を妊娠する確率は5%ほどと考えられます。
クロミッドの影響で2つ以上の卵胞が育ちやすい環境なので二卵生双生児になる可能性はクロミッドを使わない人工受精に比べて高くなります。
双子が生まれると家族が一気に増えて喜びも倍ですが、負担も相当にかかります。
妊娠中から体調管理に人一倍気を付ける必要がありますし、産まれた後の育児も大変です。とてもお母さん一人では対応できないので周囲の力添えは欠かせません。
双子を極力避けたいならクロミッド以外の排卵誘発や自然に卵胞を育てるほうが無難でしょう。
ただ、自然妊娠を含めた様々な方法で妊娠しても一卵性双生児が発生する可能性はゼロではありません。
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クロミッドを使わずに人工授精をすることもあります
人工受精の方法は一つですが、下準備の期間は様々な選択があります。
クロミッドを使う、ほかの薬(セキソビットなど)を使う、HMG注射やhCG注射など強い刺激で卵胞を育てる、自然に任せるなど様々です。
女性側が比較的若く、ホルモンバランスが良く排卵に全く問題がなければ自然に任せるのも一つの選択です。
逆にクロミッドでも排卵が難しい場合は女性ホルモンの注射を続けて卵胞を育てなければ妊娠は難しくなります。
病院によっては自然に任せることを渋るところもありますが自分の体は自分で管理するものです。
卵巣の中の卵子予備軍が年齢相応に多く、年齢も20代ならクロミッドなしの人工受精も検討の余地があるでしょう。
クロミッドは副作用も多いので利点と欠点どちらも判断して使う必要があります。
条件さえ合えばクロミッドを使わない人工授精でも妊娠したケースもあります。