- クロミッドはエストロゲンに擬態して脳を騙す作用が!
- クロミッドを使った排卵誘発のメリットは?
- クロミッドの作用時間は5~7日ほど!1日1回服用が原則です
- クロミッドの効果はいつから出る?効果を高めるに使用量を増やすことも
- クロミッドは高齢の方の体外受精を促す作用も!クロミッドの不妊治療
- 効果がなくても大丈夫!他の方法でより強い排卵を促します。
クロミッドはエストロゲンに擬態して脳を騙す作用が!
クロミッドを飲むとなぜ排卵が復活するのでしょうか。
その仕組みは少し複雑ですがクロミッドがどのように体に作用するかを知ると理解しやすいと思います。
説明が遠回りになりますが参考になれば幸いです。
クロミッドとは人工甘味料みたいなもの?!
あなたは人工甘味料で甘みをつけたお菓子を食べたことはあるでしょうか?
甘みを感じながら血糖値を上げにくい、カロリーが少ないと好評です。砂糖の高騰もありダイエット食品だけでなく市販のお菓子でも人工甘味料を使ったものが増えています。
しかし人工甘味料もメリットだけではありません。
甘いものが体内に入っても血糖値を上げないので血糖値を下げる働きがあるインスリンが「なーんだ、甘いものが入っても働くなくていいんだ」とばかりに怠け出します。(=インスリンの働きが鈍くなる)
さらに一部の人工甘味料は脳の満腹中枢を混乱させると言われています。これらの甘味料は満腹ホルモンを活性化させて満腹感を生み出します。
しかし過剰に活性化してしまい満腹の刺激が長引き、脳の満腹を感じる場所が麻痺してしまいます。
こうなるといつでもお腹が満たされない焦燥感に駆られます。どれだけ食べても満たされることがありません。このままでは暴食まっしぐらです。
血糖値が上がらないことで脳の満腹中枢が混乱することも知られています。「舌は甘みを感じているのになぜ血糖値が上がらないんだ?もっと甘いものを摂取しろ!」と司令を出してしまうのです。
そのため「カロリーの少ない人工甘味料を使ってるのに肥満が改善しない」ことが起こると言われています。
実はクロミッドも同じような働きがあります。
クロミッドが騙して混乱させるのは脳の視床下部という場所です。ここは女性ホルモンや自律神経など重要な機関の調整を司る司令塔です。
クロミッドは脳を騙す!騙された脳はどんな司令を出すの?
クロミッドは体内に入ると卵胞ホルモンのエストロゲンのように振る舞います。
エストロゲンは月経開始から排卵期まで盛んに分泌されるホルモンで卵胞の育成に欠かせません。
しかしクロミッドはエストロゲンとして働くことはできません。
舌に甘みを感じさせるのにカロリーのほとんどない人工甘味料のような存在です。
舌に甘みを感じた満腹中枢が「よし、糖分が入ってきたな」と感知するように、視床下部に「よし、エストロゲンは十分にあるな」と誤解させます。
しかし視床下部はすぐに異常に気づきます。エストロゲンがたくさんあるはずなのに卵巣はほとんど働いていないのですから。
甘いものを食べたはずなのにいつまでも血糖値が上がらず混乱する満腹中枢のように、視床下部も混乱します。
なぜエストロゲンがあるはずなのに卵巣が反応しないのか・・・
誤った視床下部の判断が排卵を誘発させるきっかけに
この異常事態に視床下部はこう判断します。
「エストロゲンが足りないせいだ!」と。クロミッドに騙された視床下部は下垂体という部下に司令を出します。卵巣に働きかけて「エストロゲンが足りない、もっとエストロゲンを出せ」という内容です。
下垂体は忠実に命令を受け入れ、卵巣に「視床下部からエストロゲンを出せという司令を受けた。
ただちにエストロゲンを出すように」と連絡をします。その指令を受けて卵巣は普段よりずっと多くのエストロゲンを生み出すのです。
体内はたっぷりエストロゲンに満たされ、普段はなかなか育たない卵胞もすくすく成長しやすくなります。
クロミッドが排卵誘発剤として使われるのはこのような作用があるからです。
脳を騙すと様々な影響が出ます。人工甘味料の例は人間の思惑通りに作用しない代表的な悪い例ですがクロミッドのようにうまく利用することもできます。
クロミッドの効き目は抜群。最大80%の女性の排卵を復活させます
クロミッドの効き目は非常に高く、軽度の排卵障害ならすぐに改善できます。
おおよそ80%の女性の排卵を促すのでタイミング療法を使った自然妊娠が望めます。
もちろんクロミッドも良いことばかりではありません。
子宮内膜を薄くしたり粘液を減らすなど様々な副作用があるので、長期間使える薬ではありません。限られたチャレンジ期間で妊娠を目指しましょう。
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クロミッドの副作用【5つのパターン別まとめ】この症状は副作用?
クロミッドを使った排卵誘発のメリットは?
クロミッドは自力でエストロゲンを増やし自然妊娠を促します。
クロミッドのメリットはたくさんありますが、箇条書きすると以下になります。
・昔からある薬なので処方、使用期限、効果と副作用が医師の間で広く熟知されている。
・保険適用されているので薬代がとても安い
・効果が高く、軽い排卵障害ならすぐ改善できる
・自力で女性ホルモンを生み出すので注射に比べて安心
クロミフェン製剤(クロミッドの主成分)が認可されたのは1968年です。
引退間近のベテラン産婦人科の医師も研修医もクロミッドがどのような薬かを熟知しています。
医師なら医学的知識をなんでも知っていると思いがちですが、決してそうとは限りません。
近年は様々な排卵誘発の方法が編み出されていますが不妊治療専門の医師しか知らないような治療もたくさんあります。
その点クロミッドは専門性が低く、たいていの医師なら把握しています。
昔から広く普及している薬なのでエビデンスも豊富で副作用を最大限抑えたガイドラインも作られています。地域格差なく地方でも都会でも使う薬です。
しかも効果は高く、(ほかの排卵誘発法に比べれば)副作用も少な目です。
クロミッドにも妊娠しにくくなる困った副作用はありますがほかの排卵誘発法の副作用は命に関わるおそれがあります。クロミッドは「入院したり命を取られないだけ」安心です。
クロミッドの作用時間は5~7日ほど!1日1回服用が原則です
クロミッドの効果はいつまで続くのでしょうか。
薬は肝臓で代謝されて少しづつ体内から排出され減っていきます。医学的には半分まで減った状態を消失半減期といい、薬の効果が下がる目安にします。
クロミッドの消失半減期は58時間。しかしまだ半分は体内にあるので作用時間は5~7日ほど続きます。
そのためクロミッドの服用は1日1回が基本です。
症状によっては1日2~3回処方されることもありますが、クロミッドは長い間体内に居座る薬なので1日1回で効果が得られます。
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クロミッドの効果はいつから出る?効果を高めるに使用量を増やすことも
クロミッドの効果が続く期間は飲み始めた直後から排卵ごろまで。
クロミッドは月経周期3~5日ごろから5日間服用するのが一般的で、体内で最大1週間ほど居座るので排卵期までクロミッドの恩恵が受けられます。
クロミッドの効果的な飲み方は自分の体に合う量を定期的に飲むことです。
しかし初めてのクロミッド服用ではどれだけの量が適量かは分かりません。
まずは1日1錠でチャレンジしてクロミッドの効果が見られなかったら1日2錠に増やします。日本のガイドラインでは最大1日3錠まで増やすことができます。
クロミッドの効果を高めるためにはエストロゲンをたくさん生み出す環境を整えることが第一です。
規則正しい就寝時間とバランスの良い食生活を心がけ、適度な運動で血流をスムーズに流す努力もしましょう。
卵巣に十分な血流を送ることで卵胞は育ちやすくなります。
特に大豆製品は擬似エストロゲンのイソフラボンを豊富に含んでいます。少量でいいので毎日欠かさず摂取したいところです。過剰摂取は体を冷やすので程々を心がけましょう。
下半身を冷やさないようにレッグウォーマーなどで保温しましょう。
クロミッドは高齢の方の体外受精を促す作用も!クロミッドの不妊治療
クロミッドは一般的な不妊治療だけでなく、体外受精など高度不妊治療にも使うことがあります。
特に40代の高齢妊娠を目指す方には体外受精の採卵で大いに役立ちます。
自分で生み出した女性ホルモンは卵胞を育てやすい?
クロミフェン(クロミッドの主成分)が誕生するまでは注射で外から女性ホルモンを注入するしかありませんでした。
しかし調薬が非常に難しく、多すぎると卵巣が激しく腫れ上がるOHSS(卵巣過剰刺激症候群)という副作用が出やすくなります。
ひどい腹痛や腹水に苦しみ、入院や死亡事故もある危険な副作用です。
クロミッドもOHSSのリスクが全くないわけではありませんが、発生頻度は比較的低いと言われています。
なにより自分の体で生み出された女性ホルモンなので卵胞が育ちやすいという利点があります。
さらに高齢になると注射で女性ホルモンを打っても卵胞が育ちにくくなります。
しかしクロミッドを使って自力で女性ホルモンを出せば卵胞が育ちやすいことがあります。
そのため卵巣の卵子予備軍の在庫が少ない方はクロミッドを利用した「マイルド法」という体外受精を行うことがあります。
高齢になると卵胞の数が少なくなります。少ない卵胞を育てるならムリに注射でドーピングするよりもクロミッドで穏やかな成長を促すほうが育ちやすい傾向があります。
クロミッドの効果で元気な卵子が採卵でき、妊娠の可能性が上がります。価格も一般的な採卵に比べて比較的安価に抑えられます。
クロミッドの効果はいつまでも続きませんが最後のチャンスになる年齢の女性には高い効果が期待できます。
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効果がなくても大丈夫!他の方法でより強い排卵を促します。
残念ですが、クロミッドを増量しても効果なしというケースはあります。クロミッドも魔法の薬ではないので効果がないこともあります。
クロミッドがダメなら次がある!ゴナドトロピン製剤
しかし心配はいりません、卵巣に卵子の元がある限り排卵誘発ができる可能性はあります。
ゴナドトロピン製剤という薬を注射し続ける方法です。ゴナドトロピンは低温期に分泌される女性ホルモンで卵巣に働きかけ、卵胞を育てます。
低温期に卵胞を育てるホルモンを注射し続けることで卵胞が育ち、排卵することがあります。
しかしクロミッドのように自力でホルモンを出すのではなく、言葉は悪いですが外からドーピングしているようなものです。
毎日注射しなければならず、副作用に気をつけながらの治療になります。
注射の中身のゴナドトロピン製剤は個人差があり、1種類のホルモンだけのこともあれば数種類ブレンドすることもあります。
決して楽な治療ではありませんが適切な治療を続ければ多くのケースで排卵が復活します。
母乳が出るホルモンが多すぎる人にはドーパミン作動薬
人体は様々なホルモンがあり、母乳を出すために欠かせないホルモンがあります。
プロラクチンというホルモンで産後から授乳後まで盛んに分泌されます。
授乳中のお母さんは排卵が抑えられ妊娠しにくいことが知られています。
授乳しないといけない赤ちゃんを抱えて妊娠出産したら兄弟どちらもケアし切れません。プロラクチンには排卵を抑える働きもあります。
女性の中には妊娠出産していなくてもプロラクチンが高い人がいます。この場合はプロラクチンを抑えなければ排卵は戻りません。
カバサールやパーロデル、テルロンという薬を服用し続けることでプロラクチンを抑え、妊娠できる体を取り戻します。
脳腫瘍を取りのぞき、胃潰瘍薬などプロラクチンが増える薬を止めればほとんどのケースでは薬で改善します。
ただ薬の副作用も強く、吐き気やめまい、眠気、気分の落ち込みなど様々な症状が出ることもあります。
できれば夜の寝る前に服用して副作用に悩まされないようにしましょう。
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セルフケアが一番大事!自分の出来ることは実践しましょう
健康は医師や薬が作るものではありません。まずは自力でできる限りの改善をして、それでも難しいところをお願いするのが医療です。
排卵の復活には薬の力だけでなく自身の体質改善も欠かせません。痩せすぎも太りすぎも排卵の妨げになります。焦らずに時間をかけて適正体重になるように生活習慣全般を見直しましょう。
適正体重になることで薬の効果が良くなることもあり、排卵誘発だけでなく健康にもなれます。赤ちゃんをはぐくむ体作りも頑張っていきましょう。